チーズの種類は世界で数百種類とも数千種類とも言われています。なぜこれほどまでにチーズは種類が複雑に分かれることになったのか、その内幕を解明してみました。

はじめに

チーズはこの世で最も種類の多い加工食品と言われています。その数は数百種類とも数千種類とも。数百と数千ではずいぶん開きがあるじゃない、と思われたアナタ。かの文豪カサノヴァでさえチーズの辞典を作ろうとして、あまりのその種類の多さに断念したくらいなんです。チーズの種類が果たして幾つ存在するのか、それは誰にもわからない永遠の謎なのです。それではチーズのバラエティに富んだ世界をちょっとだけ覗いてみましょう。

ミルクの種類による分類

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チーズはミルクを原料として作られています。このミルクの種類でまずチーズは複数の種類にわかれます。一般的なのは牛、羊、山羊、水牛の4種類。最も多いのは牛乳ですが、羊乳のチーズはイタリアで「ペコリーノ」の総称で親しまれ、山羊乳のチーズはフランスで「シェーブル」と呼ばれて独自の地位を確立しています。また、水牛乳のモッツァレラチーズはイタリアで最高級品とされています。加えてスペインでは複数の異なる種類のミルクを混ぜた「混合乳」によるチーズも多くあり、こういったものも合わせるとミルクの種類だけでチーズは結構な種類があることになります。

生地の硬さによる分類

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チーズはその硬さによっても多くの種類にわかれます。チーズはミルクを酵素などで固めて水分を排出させたものですが、この水分の排出のさせ方でチーズの硬度が決まります。まずチーズの生地そのものの重みで自然に水分を排出させたのが「ソフトチーズ」と呼ばれる柔らかい生地の種類。生地を型に入れ硬く圧搾するのが「セミハードチーズ」、これに熱を加えて更に水分を排出させ、より硬くするのが「ハードチーズ」、更にこれを1年以上熟成させ、水分をすっかり蒸発させてカチカチにするのが「エキストラハードチーズ」です。硬いものになるとナイフも通らないほどになるんです。

熟成方法による分類

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チーズは熟成することで独特の風味を醸し出す発酵食品ですた、この熟成方法には実に多くのバラエティがあります。カマンベールなどのように白カビによって熟成させるもの、ご存知ブルーチーズと呼ばれる青カビによって熟成させるもの、ウォッシュタイプと呼ばれる表皮を塩水やお酒などで洗って熟成させるもの、またシェーブルチーズの多くによくある表皮に木炭粉をまぶして熟成させたりするものもあります。

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他にも布にくるんで熟成させるもの、ハーブに包んで熟成させるもの、表皮をワックスでコーティングして熟成させるもの、ワインの搾りかすに漬け込んで熟成させるもの、はたまたダニを繁殖させて熟成させるなんてものまであります。逆にモッツァレラチーズのように、まったく熟成させないフレッシュタイプという種類もあります。熟成する期間も数週間から数年にいたるまで幅広く、チーズが多くの個性ある種類に枝分かれするのが熟成方法です。

チーズ以外のモノと混合させる

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チーズを「チーズ以外のモノ」と混ぜ合わせることでまた様々な種類のチーズが生まれます。よく食べられているのは「クリームチーズ」と呼ばれる、生クリームと混ぜてクリーム状にしたもの。またオランダではクミンやバジルなど、パイスを混ぜ合わせたチーズの種類が多くありますし、フランスでは表面にパン粉などをまぶして異なる食感を追加したものなどもあります。

そして生産地による分類

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極め付けは生産地による分類です。チーズが作られる地域が違えば当然、気候や土壌も違い、ミルクを出す家畜が食べる牧草に含まれるミネラルも違い、熟成・発酵させる微生物の働きも異なってきます。つまり同じ材料と同じ製法で作られたチーズでも、作られる地域が違えば違った味になるのです。ヨーロッパでは産地と原料とチーズの名称をしっかり統制するAOCやDOPなどのような原産地名称保護制度があります。この制度を単なる品質保証だと思っている方がおりますが、そう単純なものではありません。つまり異なる地域で作られたチーズは例え同じ原料と製法でも別の種類だから同じ名称を名乗ってはいけません、ということなのです。

おわりに

チーズの種類がなぜこれほどまでに多いのか、その理由がご理解いただけたでしょうか。チーズ業界では1960年代以降、アメリカを皮切りにアルチザンチーズ運動という、アルチザン(フランス語で「職人」の意味)つまり手作りのチーズの良さを広めていこうという風潮が高まり、現在では全世界に広がっています。このため、ここ数十年の間に全世界で小規模のチーズ生産業者が増え続けており、この間、日本でも100件ほどのチーズ工房が新たに生まれました。おそらくチーズの種類はこれからも増えてゆくことでしょう。